「君は何を見てるの?」
不意にかけられた言葉を一瞬、誰にかけられた言葉なのか分からなかった。声のした方を反射的に振り向くと、声を発したであろう主は私を真っすぐに見ていた。それで私が声をかけられたのだと認識した。
「・・・。」
私は何と答えればいいのか分からず、再び見ていた風景に目を戻した。
ビルがあった。
高い高い乱立したビル群。
「・・・ビル?」
私は首を傾げながら答えた。
本当は何を見ていたっけ?
「おもしろい?」
その人は憮然とした表情で私と一緒の方向を見る。
楽しむために見ていたっけ?
「僕はつまらない。むしろ嫌悪する。」
「嫌悪?」
私はその人の言葉になぜ?と聞き返す。
「だって、僕の森を壊したんだ。」
コワス
「・・・。」
一瞬、強烈な印象とともに浮かんだ言葉に私は身動きができなかった。
「・・・ねぇ?」
その人は にたり と笑う。
「国神様?」
クニガミ
ここは、この都市に唯一の森が広がる高台の丘。
頂上では都市全体が見渡せる、都市をくまなく見守る事ができる場所。この都市をがまだ国であった古の時からずっと彼女はここにいて、この都市を見守っていた。時には見守るだけではなく、自ら守りながら。
「科学ができて、物怪が恐れられなくなって、何十年。物怪がもうこの都市を襲う事はなくなったと思ってたから、私は見守るだけって腑抜けてたのに・・・。」
国神と呼ばれる彼女は傍にある土塊を恨めしそうに見た。
「やれやれ、物怪とは違う存在が危機におとしめようとしてるのか。」
国神は、彼女の武器である大振りの槍を現出させた。
「頑張ろっか。」
-彼女の戦いが再び始まった。-